光を閉じ込めろ!傘袋とレーザーで作る「魔法のチューブ」実験

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

前回、傘袋(かさぶくろ)を使って、空が青く夕焼けが赤くなる「光の散乱」の実験をご紹介しましたね。あの感動的な夕焼けの色と、今あなたがスマートフォンやパソコンで見ているインターネットの光が、実は同じ「光」の不思議な性質でつながっているとしたら、驚きませんか?

今日は、あの時使ったのと同じ傘袋が、今度は「光ファイバー」に変身します!

光ファイバーって、なあに?

みなさんは「光ファイバー」と聞いて、何を思い浮かべますか? 教室で生徒たちに聞くと、たいてい目線がふっと上に行き、眉間にしわが寄って、首をかしげます。ピンとこないんですね。そこで実際に実物を見せて、端から光を入れると、もう片方の端がピカッと光る様子を観察させます。すると…

あっ!クリスマスツリーのやつだ!

と思わず声が漏れます。

そう、最近はキラキラと美しく光るクリスマスツリーの装飾として、とても身近になっているようです。

でも、光ファイバーの本当のすごさは、そこだけではありません。私たちの生活を支える超高速インターネットの通信や、お医者さんが体の中を見る内視鏡(胃カメラなど)にも使われている、まさに現代の「魔法の糸」なんです。その魔法の秘密こそ、光が外に漏れ出ないようにする「全反射(ぜんはんしゃ)」という現象。光をギュッと繊維の中に閉じ込めて、どこまでも遠くに運ぶ技術です。

でも、この「全反射」って、言葉だけ聞いてもちょっと分かりにくいですよね。 そこで、あの傘袋の出番です。簡単なモデル実験で、光が「閉じ込められる」瞬間を体験してみましょう。

科学のレシピ:傘袋光ファイバー!

用意するもの:

  • 傘袋(なるべく透明なもの)
  • 石鹸(ハンドソープの「キレイキレイ」がおすすめ。その他、台所用洗剤や入浴剤でも可)
  • LEDライト
  • レーザーポインター(実験の主役です!)

手順:

1 傘袋いっぱいに水を入れます。ここに石鹸を水にとかしたもの(キレイキレイならそのまま)を「本当にごくわずか!」溶かします。まず1〜3滴で一度やめて、以下の実験をしてみて、見えにくかったら少し足す、という進め方がベストです。

2 部屋をできるだけ真っ暗にします。ワクワクする瞬間ですね。

3 傘袋の端からレーザーポインターの光を入れます。

結果:

まず、水の中にレーザーの「道筋」が見えるはずです(見えない場合は石鹸水をもう少し入れます)。なぜ道筋が見えるのでしょう? これは、石鹸水が「コロイド溶液」という状態になっているからです。目には見えないほど小さな石鹸の粒子(コロイド粒子)が水の中に浮かんでいて、そこにレーザー光が当たると光があちこちに散乱(らんさんらん)します。この現象を「チンダル現象」と呼びます。

前回の夕焼けの実験(レイリー散乱)も散乱でしたが、あれは空気の分子という「もっと小さな粒子」による散乱でした。粒子の大きさで光の散乱の仕方が変わるなんて、面白いですね!

※石鹸水が濃すぎると、光が手前で散乱しすぎてしまい、奥まで届きません。絶妙な「うすさ」が成功の鍵です。

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さて、いよいよ本番です。レーザーを入れる角度を変えてみましょう。傘袋の壁面に対して、浅い角度(入射角を大きく)でレーザーを入れていくと…ある角度から、光が外に漏れ出なくなり、傘袋の中をジグザグに反射しながら進んでいくのが見えます!

これが「全反射」です!

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光が「水」の中から「空気」中に出ようとするとき、角度が浅すぎると、空気の「カベ」にすべて跳ね返されてしまうのです。まるで鏡のように。 本物の光ファイバーは、この「全反射」が必ず起こるように、精密に設計されているから、光(=情報)を閉じ込めたまま、何キロメートルも先まで送ることができるんですね。

逆に、入射角が小さい(壁に対して垂直に近い)と、光は傘袋の壁を突き抜けて外に出てしまいます(これを「屈折」といいます)。もちろん一部は反射もしますが、光がどんどん漏れてしまうので、遠くまでは届きません。

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教科書で「全反射」の図を見たり、問題を解いたりする前に、まずはこの「見てわかる」体験をさせてあげたいですね。自分の手で光を操り、光を「閉じ込める」感覚。この体験が、物理への興味を一気に引き出してくれます。

傘袋は透明なものと少しくもったものがありますが、実験にはぜひ透明なものを使いましょう。雨の日にスーパーなどでもらう透明な傘袋で十分試せます。(もちろん、実験用にいただく際は、お店の人にひとこと断ってからにしましょうね!)

たくさん実験したい!という場合は、浅草橋のシモジマのような包装用品専門店に行くと、業務用の傘袋が販売されています。これなら気兼ねなく、何度も挑戦できます!

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